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あらすじ
いい子だ。もっと俺を感じてくれ
残虐王のはずが、じつは溺甘王でした!?弱小国の虐げられ姫サシャは、“残虐王”と噂される皇帝アレクシスの花嫁選びの席に送り込まれ、あげく余興として「裸で踊れ」と言い放たれる。だが毅然と対応したサシャを皇帝は気に入ってしまい!? 「俺は惚れた女を手放したりしない」残虐どころか有能で民に慕われるアレクシスの予想外の溺愛に、サシャの心は体ごと開かれていきー。
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キャラクター紹介
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サシャ
草原の民の生まれだが、父親のアルムグレーン王に引き取られる。兄弟たちからは疎まれ、窮屈な生活を強いられていた。 -
アレクシス
ヴァルトサール帝国の若き皇帝。周囲の国を侵略し、極悪非道な仕打ちをする残虐王と噂されていたが、実は――。
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試し読み
「サシャ。お前が欲しい。これは本心だ」
熱っぽいささやきとともに、アレクシスが前のめりになりながらサシャに顔近づけてきた。
唇が触れる距離に、サシャは思わずと息をのむ。
お前が欲しい。
言葉だけ聞けば甘いセリフだが、サシャはそれを真正面から素直に受け入れられるほど子供ではない。
(興味をくすぐられたから、とりあえず味見だけしておこうってコトかし……)
そもそも皇帝には愛妾がいるだろう。
皇后に自由はないだろうし、二度と離宮から出られないかもしれないが、アルムグレーンの王宮にいた時と同じと思えば、大したことはない。皇帝もそのうちサシャの存在を忘れるに違いない。
たった一度のことだとサシャは腹をくくった。
諦め続けた人生だったせいかもしれない。
サシャは普段は気が弱いくせに、こうだと決めると途端に肝が据わる女なのである。
「陛下……その……私は、閨教育を受けておりませんので、うまく立ち回れずご不興をかってしまうやもしれません」
みそっかす王女だった自分は、ただそこに存在しているだけで人として数に入っていなかった。
一応謝っておこうと口にすると、アレクシスはまたクックッと肩を揺らして、
「お前が気にすることではない。俺は女をかわいがるのが好きだからな」
と、いたずらっ子のような笑みを浮かべる。
どうやら皇帝陛下は経験豊富らしい。
ふぅんと思いながら彼を見つめていると、
「妬いたか」
真顔になったサシャをアレクシスがからかってきた。
「いいえ。陛下が手練れであるのなら、私がただ寝転がっていてもよかろうと安心したところです」
きっぱりと言い返すと、アレクシスは一瞬驚いたように目を見開いて、ハハッ! と笑い声をあげる。
「なんだ、俺の勘違いか」
「……そうです」
若干膨れながらそう言うと、またさらにアレクシスが楽しそうに笑った。
(そうよ。嫉妬なんかするはずがないわ)
アレクシスを愛していれば傷つくこともあるだろうが、自分たちは違う。
サシャはたまたま選ばれた花嫁で、最低限、彼の不興を買わなければいいだけのこと。
そして皇帝は仕事として自分を抱くだけ。嫉妬なんかしない。王族の結婚は義務であって、そこに愛などあるはずがない。
彼にとっても、これは政務のひとつだ。
サシャとしても、さっぱりしたアレクシスの態度を見て、少し気が楽になった。
「ではよろしくお願いします」
生真面目に彼を見上げると、またアレクシスがクスクスと笑う。
よく笑う男だ。まぁ、いつも不機嫌でいられるよりも、ずっといいのだが。
「肩の力を抜いてくれ」
アレクシスは大きな手のひらで撫でつけるように肩をさする。羽のように軽くて薄いネグリジェ越しだが、アレクシスの手の感覚が伝わってくる。
体の輪郭を確かめるような優しい手つきだ。
性的な匂いはせず、まるで犬か猫にでもなったような気分である。
(気持ちいいかも……)
そうやってしばらく彼に撫でられ、体から力を抜いていたサシャだが、ハッと我に返る。
(本当に私、ぼうっとしているだけだったわ)
せめてこのくらいはと、慌ててネグリジェのリボンに手をかけたところで、
「ゆっくりでいい」
アレクシスはサシャの手をつかんで止めると、そのまま頬を傾け、キスをしてきた。
口づけはこれで二度目だ。
数時間前の結婚式の時が初めてだが、まぁこんなものかと思ったばかりである。
(男の人の唇って、普通に柔らかいの、不思議だな……体はいくらぶつかってもびくともしなそうなくらい硬いのに)
せめて背中に腕を回したほうがいいだろうか。
そんなことを考えていると、
「考え事か? 余裕だな」
からかうようにアレクシスがささやき、サシャの頬を両手で挟む。そして今度はグイッと唇を押し付けてきた。
「ンッ……ん、んっ?」
唇を割り、舌が口内に滑り込む。驚きで喉の奥に縮こまったサシャの舌をからめとり、ちゅうと音を立てて吸いあげる。大きな手がサシャの耳を覆うと、頭の中でくちゅくちゅと淫らな水音が響いた。腹の奥がきゅうっと締め付けられる。
まるで甘美な毒を流し込まれているような感覚に、眩暈がした。
「ひ、あっ……う、ンッ……」
己の唇から漏れた甘い声に、頬に熱が集まる。
(待って……これは、なに……?)
結婚式の口づけなど、ただの接触に過ぎなかった。
アレクシスのキスは甘やかで、なにも知らないサシャを一気に快楽の淵へと追いやろうと迫ってくる。
「や、はっ……」
唇の端から飲み込めなかった唾液がつうっと零れ落ちる。
大混乱の中、震える手でアレクシスのナイトガウンをつかんで揺らす。唇が一瞬離れて、慌てて顔を逸らし声をあげていた。
「ま、まって……!」
「なぜ?」
アレクシスが目を細めて尋ねる。
「そ、その、ビックリして……心臓がどきどきして……」
自分の口からこんな声が出るとは思わなかった。
思わず唇を押さえると、アレクシスは切れ長の目を細めてかすかに息を吐く。
「ドキドキするのか……かわいいな」
「か、かわっ……?」
「自分の手の中で乱れる女を見て、嬉しくない男はいない」
そして顔を逸らしたままのサシャの顎の下に指を入れて、子猫にするようにくすぐる。
「俺はお前をかわいがりたいだけだ。安心して身をゆだねるといい」
アレクシスはサシャの細い腰をつかんで、ぐいと引き寄せた。
「ひゃっ……!」
気が付けばサシャはアレクシスの膝の上に向かい合う形でのせられていた。さすがに全体重を預けることに抵抗があり、思わず膝で立ち上がると、
「いいからこっちに」
アレクシスはまた引き寄せて、完全に彼の膝の上に座る形になった。
彼のたくましい太ももはまるで丸太のように硬く、確かにサシャが座ったくらいではびくともしなそうだ。体から力が抜ける。
(顔が近い……)
彼の頬に手をのせると、アレクシスはサシャの手のひらにすりと頬を寄せ、ちゅっと音を立ててキスをする。
手のひらに触れる彼の唇の感触に、ぞくっと体が震える。まるで恋人同士の戯れのようで、サシャの頬は真っ赤に染まってしまった。
「ずいぶん……気安くなさるんですね」
口から漏れた言葉は少しつっけんどんだった。
「なんだ。ほだされたか?」
「は? 別にそんな、違いますけどっ」
十日前に会ったばかりのこの男に、多くの血を流した男にほだされるはずがない。
ぷいっと顔をそむけると、アレクシスはクックッと肩を揺らして笑って、それからサシャの首筋に顔をうずめ、音を立てながらキスをした。
大きな手がサシャのささやかな胸をつかみ、柔らかく揉み始める。
「あっ……」
指先が布越しに胸の先端をこすり上げ、くすぐった。
カリカリと爪を立てて弄られるうちに、じんわりと体が熱くなり始める。
「あ、アッ……んっ……」
自分で触れてもこんなふうに感じることはない。肉体は肉体でそれ以上でも以下でもないからだ。
それがなぜ男にくすぐられただけで、こんなに気持ちがいいのだろう。
頬がじぃんと痺れる。どこもかしこもくすぐったくて、もどかしい。
とっさにアレクシスの手首をつかむと、
「どうした?」
彼は楽しげに首をかしげる。
「やっ、あのっ……あまりそう、されると……」
「いいんだろう?」
そう言って、彼は指先で乳首をつまみ上げる。
「アッ……!」
その瞬間、背筋に電流が流れるような快感が走り、サシャは胸を突き出すように腰を跳ね上げていた。
アレクシスはそのまま顔を寄せて乳首を吸い、それから手を下ろして太ももを撫であげながら、両足の間に滑らせる。下着の布越しにかりかりと爪を立ててそれからサシャの花芽をそうっと指でつまみ上げた。
「んっ……あ、はっ……」
「いい子だ。このまま力を抜いて俺の指を感じてくれ」
アレクシスはサシャの背中を支えながらゆっくりとシーツに寝かせ、もう一方の手を膝にのせて大きく左右に開く。
とんでもなく恥ずかしい格好に赤面するが、くにゅくにゅとアレクシスの指が動くたび、甘い快感が全身を包み込んで羞恥を忘れた。
(大丈夫、こんなのすぐに終わるわ……)
サシャは甘い陶酔の中、アレクシスに言われたとおり彼の指の感触に耽溺する。
そうしてアレクシスはサシャの下着の紐をするりとほどくと、指を割れ目にゆっくりと這わせ始めた。
「あ、やっ……んっ……」
彼の爪の感触に、自然と腰が跳ねる。
「入れるぞ」
アレクシスは甘くささやき、それからゆっくりと逆手にした中指をサシャの蜜口に押し当て、中へと入れる。
「あっ……!」
異物感に思わず体が強張ったが、アレクシスがなだめるような柔らかな声で、
「指一本なら、痛くないだろ?」
とささやく。
「んっ……」
こくりとうなずくと、アレクシスは安心したようにその指をゆっくりと抜き差ししながら、膝を押さえていた手でサシャの淡い金色の草むらを撫で始める。
「お前の腹は、薄いな……」
アレクシスは感触を楽しむように手のひらを何度か往復させた後、親指と人差し指で、むき出しになった花芽を左右から挟むようにつまみあげる。
「ひ、あっ……!」
その瞬間、布越しではない快感が全身を包み、サシャは陸にあげられた魚のように体を跳ねさせる。
だがアレクシスはにやりと唇の端をもち上げるだけで、その手を止めてはくれなかった。
「あ、あっ、んっ、まって、あっ……んっ……あ、ああ……ッ」
「指が締め付けられてる……俺のモノを収めたら、どうなるだろうな?」
アレクシスは指で腹の裏をこすりながら、花芽をこね意地悪な声でささやく。
「あ、やっ、ひうぅ~……ッ」
腹の奥がきゅんきゅんと甘くうずいている。
彼の指を受け入れている部分が、もっと弄ってほしいと強請っている。無言で腰を揺らすと、アレクシスが切れ長の目を細めて、すうっと指を引き抜いてしまった。
「あっ……」
もう少しでもっと気持ちよくなれたのに。そう思った瞬間、耳まで熱くなった。
サシャの薄い腹は男を受け入れたことは一度もなかったが、今はなにをどうすれば正解なのか、本能は理解していた。
アレクシスはそんなサシャを見て、にこりと笑う。
「やっぱり、あなたは、いじわるです……」
サシャは涙目になってアレクシスを見上げる。
すると彼は軽く肩をすくめ、羽織っていたナイトガウンをするりと背中の後ろに落とし全裸になった。
「俺が意地悪になるのは、これからだ」 -
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