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あらすじ
あなたは、俺のすべてだ
十年想い続けた皇帝陛下の溺愛はとまりません!神殿に仕えるエレノアは戦乱に巻き込まれた際に意識を失い、目覚めると十年過ぎていた。何故か年を取っていない彼女は、公爵家の令息で友人の騎士アレクシスが皇帝となり彼と結婚していると知らされる。「初めてだけど怖くはないだろう?」アレクシスにどろどろに愛され抑えていた恋心を自覚するエレノア。だが彼はまだ隠していることがあるようで!?
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キャラクター紹介
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エレノア
お人好しで頑張り屋な元聖女。起きたら十年経っていた。 -
アレクシス
公爵家の三男だったが皇帝に。エレノアが大好き。
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試し読み
アレクはそんなエレノアをうっとりと見つめて、囁く。
「エレノア。あなたに、触れていい?」
「いいです。おねがい、触れてください……!」
エレノアが切実な願いを口にすると、いきなり唇が重なった。
触れあった途端、心地よさでエレノアはふるりと震える。
(やわらかい、甘い、とろけそう……)
初めて口にしたバターたっぷりのお菓子みたいに、アレクの唇の感触は甘かった。
エレノアはあっという間に夢中になってしまい、もっと、もっととアレクの唇を求める。
アレクはそんなエレノアの反応を楽しむように、触れあうだけの口づけを繰り返した。
一度、二度、三度。
(どうしよう。止まらない)
もっと、もっとほしい。
永遠にこうしていたいくらいだ。
一体何度繰り返したのか、わからなくなったころに、アレクがくすくすと笑い出す。
「どうしたの。口づけが好き?」
「ご、ごめんなさい、私」
はっとしてエレノアはアレクから顔を離そうとした。
が、アレクはそんなエレノアの後頭部を、大きな手のひらで支えて囲いこむ。
「いいんだよ、好きで。俺は嬉しい」
甘やかす声音で言い、今度は覆い被さるようにして唇を重ねてきた。
自分で求めたときよりも強くアレクを感じ、エレノアの頭はじぃん、と痺れる。
(人の熱が、心地いい……こんなの、初めて)
ふわふわと熱に浮かされたようになっていると、実際に体がふわりと浮く。
「え」
何を、と問う前に、エレノアは寝台の中央に優しく下ろされていた。
アレクはエレノアの腰をまたぐように寝台に膝をつき、うっとりと囁く。
「十年待った。待つのは苦しくはなかったよ。あなたはこの世の美徳の化身だ、崇拝するに値する。そして崇拝に肉欲は必要ないからね」
「崇拝……?」
一体なんの話だろう、とぼんやりしていると、再び口づけが降ってくる。
今度は唇だけではない。頬にも、耳たぶにも、首筋にも、甘い唇が押し当てられる。
そのたびに体がぽうっと温かくなって、下腹部に熱い感覚がにじみ始めた。
(不思議。どうして、こんなところが?)
エレノアの呼吸が熱くなってきたのを、アレクは感じていただろうか。
彼はエレノアの首筋に口づけたあと、どこか敬虔に囁いた。
「あなたを。あなただけを、ずっと心に刻んでいる。そのまま死んでもいいとすら思った」
死、という言葉にどきりとして、エレノアはいやいやと小さく首を振る。
「アレク……死んでは、ダメです」
まるで小さな子供のような気分だ。
目の前の人がいなくなるのはいやだった。
そんなことになったら、もう少しも生きていけないような気がした。
(アレク、ここにいて。どこにもいかないで)
目尻に涙さえにじませて見上げてくるエレノアを見ると、アレクはさも嬉しそうに笑った。
十年前みたいな少年じみた表情で、彼はことんとエレノアの胸の上に額を預ける。
「ここにいるよ。あなたが許してくれるかぎり、ずっといる」
「よかった……」
エレノアがほっとしてアレクを撫でようとしたとき、彼はエレノアの胸の間にあった、寝間着の白いリボンを噛んだ。
「アレク……?」
気付いた時には、すうっとリボンがほどかれている。
エレノアの寝間着はたっぷりレースを使った前身頃が左右に割れており、白いリボンの編み込みで綴じ合わされているものだった。つまり、リボンを抜いてしまえば、胸の真ん中がぱっくり開いてしまう。
「あっ……!」
聖女としては立派すぎると常々思っていた胸の双球が、今にも身頃の隙間から姿を現してしまいそうだ。
「ま、待ってください、あの!」
エレノアは慌ててアレクの手を押さえる。
アレクは手を止め、優美で大きな犬みたいに、悲しげな顔でエレノアを見つめた。
「エレノア、あなたに触れるには、この布が邪魔なんだ。わかるだろう?」
(かわいい。きれい。かなしそう……って、違う、このひとは、今は年上の、男性で)
思わずぼうっとアレクに見とれているうちに、彼の指はすっかりエレノアの寝間着の編み上げを緩めてしまっていた。
もはや陥落寸前なのはわかっていたが、エレノアは最後のあがきで訴えかける。
「わ、わわからないではないですが、あの、まだ、殿方には、誰にも……っ」
「誰にも見せたことがない? 素晴らしい。これからも、俺以外には見せなくていい」
アレクは言い放ち、同時に柔らかく白い双球を、寝間着の外へと掬いだしてしまった。
「……っ……」
エレノアは羞恥で真っ赤になって顔をそらすが、暴れる気にはなれない。
胸に触れているアレクの手は、唇と同じく温かく、心地よかったからだ。
エレノアの心がほぐされたのとほとんど同時に、エレノアの身体もアレクを受け入れる準備ができはじめていた。
「綺麗だ……想像よりも、よほど」
アレクは熱いため息を吐き、たっぷりとした双球を手のひらに収める。
「想像、って……んっ……」
そんなことをしたんですか、と言おうとしたが、言葉にはならなかった。
エレノアは頬を染めたまま、やわやわと揉みこまれる自分の胸を見つめる。
自分でもまじまじ見る機会のなかったそれが、アレクの美しい指の間でやわやわと形を変えていく。くすぐったかったのは最初だけで、すぐに胸全体が敏感になってきた。
(なんだろう、不思議な、感じ)
エレノアはもどかしい感覚に頬を染めて、アレクの手つきに集中する。
彼の手つきはひどく優しいが、ときたま欲望に負けたように激しくなった。
そんなときにひしゃげた双球がひどく淫靡に見えて、エレノアはきゅっと目を閉じる。
するとアレクは、麗しい双球の突端近く、薄紅に染まった頂全体を、二本の指でもって優しくつまんだ。
「んぅっ……?」
ぴりり、とした痺れが胸から腰に走り、エレノアはわずかに腰を浮かせる。
(何? 胸、腰も、痺れが)
「きれいだ……まだもぎられたことのない、神の果実だね」
アレクは熱っぽく囁きながら、つまんだ場所にリズミカルに刺激を与えていく。
そもそも快楽を感じるように作られている場所を丁寧に刺激され続けると、否応なく快感が溜まる。あっという間に胸全体が快感の塊と化し、エレノアの唇からは熱い息がこぼれた。
「ん、んん……っ、アレ、ク、それ……っ」
「それって、なぁに? あなたの美しい果実のこと?」
熱をはらんだ声でからかうように言われ、つまむ指に優しい力を加えられる。
途端に強めの快楽に貫かれ、エレノアはふるりと震えた。
「や、ぁっ……!」
「かわいい……そして、本当に美しいよ。あなたのここがどうなっているか、見てごらん」
「う……? どう、って……?」
不安になってうっすらと目を開くと、アレクのつまんだところは、先ほどまでよりずいぶんと鮮やかな色になっていた。一番の突端は、まさしく果実のように凝っている。
思わず凝視してしまってから、羞恥で顔がかあっと熱くなった。
「や……! 私、おかしい……!」
「これくらいで? それは今後が大変だ。あなたは、もっともっとおかしくなるんだから」
彼はあくまで優しく言って、今度はエレノアの胸をぱくりと口に含んだ。
一番感じる紅の輪に唇を押し当てられ、じわり、と快感が広がった直後、胸の突端に歯を立てられた。
「んーっ……っ!」
まぶたの裏で白い火花が散った気がして、今度こそ腰が跳ね上がった。
「気持ちがいいね。大丈夫、普通のことだからね」
アレクはエレノアの腰の上に座り、見知らぬ快楽に暴れる体を押さえつけながら言う。
そうされると、今度は乗られた下あたり、下腹部の甘さがじぃん……と強まった。
「うー……っ」
得体の知れない快楽を逃がしたくて、エレノアは顔を背けていやいやをする。
その頭を、アレクの男らしい手が優しく撫でた。
「重いかい? それとも、びっくりしたかな。よしよし……いい子だね」
まるきり子供扱いされて、普段なら憤慨したかもしれない。
けれど今のエレノアは、愛しい相手に優しくされる喜びですっかりと蕩けていた。
もっともっと撫でられたい。優しくされたい。
でも、それだけじゃ、下腹部の熱さは溜まるばかりなのも予想がつく。
(どうしよう。どうしたらいいんだろう、これ)
嬉しくて、気持ちよくて、苦しくて、エレノアはアレクの腕にすがった
「アレク……こわ、い……」
こぼれだしたのは、そんな言葉だ。
押し寄せる未知の感覚を、どうしたらいいのかわからない。
このまま半端な熱さばかりが溜まっていったら、自分はどうなってしまうんだろう。
そんな思いをこめての囁きだったが、アレクは何を思ったのか、黙りこんだ。
しばらくエレノアの頭を撫でてから、アレクは、不意になだめるような声を出す。
「……続きは、またにしようか、エレノア」
「え……?」
予想外の提案に、エレノアは愕然として聞き返す。
聞き間違いかと思ったが、アレクはエレノアの上から下りると、寝台に腰掛けて続ける。
「焦って、すまなかった。わかっているつもりなのに、どうしても忘れるんだ。あなたの心は十年前と同じ、無垢な聖女だっていうこと」
疲れたように笑うアレクの口調は、いつの間にやら昔と同じものになっていった。
アレクはきれいに整えられた頭をぐしゃぐしゃに引っかき回し、ため息を吐く。
「いきなり『十年待ってた』とか言って押し倒されて、心がついていかなくなって当然だよ。俺が悪い。俺が、待つべきだった。あなたが起きるのは十年待てたんだから。あと数日……いや、数年くらい、待てる」
「アレク」
エレノアはうろたえて、彼の名を呼んだ。
確かに、初めての感覚は怖かった。
でも、ここで放り出されるのも、同じくらいか、もっと怖い。
エレノアの身体と心は、もうとっくにアレクを求め始めている。
「……私たち、夫婦なんですよね?」
エレノアがつたない問いを投げると、アレクは小さく首を横に振る。
「結婚だって、俺が勝手にしたことだ。あなたを守れれば、抱き合う必要はない」
淡々と告げられた言葉に、今度こそ涙があふれてしまった。
なんだか、急に突き放されたような気がした。
アレクが遠くなるのは嫌だ。アレクのそばに居られないのは嫌だ。
アレクに会えない間に、アレクはまた大けがをするかもしれない。苦しみの世界に身を投じて、暗い瞳で戻ってくるかもしれない。
それどころか、二度と帰ってこない可能性だって、ある。
「やだ……私、には、必要です……ゆるします。アレク、ここにいて……!」
「エレノア、どうした? 大丈夫だ、ここにいるだろう」
アレクは少し心配そうに見下ろしてくる。
そんな彼に夢中で抱きつき、エレノアは必死に訴えた。
「一緒にいて。怖いところに、行かないで……」
「怖いところって……大丈夫だよ、エレノア。大丈夫、ここにいる」
アレクは何度も繰り返し、エレノアの細い顎を手で押さえて口づける。
濡れた舌で唇を押しつぶすようになぞられると、唇からも淡い快楽が生まれた。
「んっ……」
快楽は淡い恐怖を溶かしてくれる。エレノアはますますキスに夢中になった。
唇を合わせるたびに、アレクの中の熱も再び温度を上げ始める。
「本当にいいの? 続けるよ?」
耳元に熱い囁きが落ちてきて、エレノアは夢中でうなずいた。
「お願い、続けてください、お願いだから……」
「そう……じゃあ、触るよ。いやだったら、必ず言って」
アレクは少しかすれた声で言い、エレノアの片足に手をかけて押し上げる。
そうしてエレノアの足の間へ入ると、愛しげに彼女の足を撫でた。
透けそうに薄い寝間着の裾から入った手が、敏感な内ももに触れてくる。
「……っ」
触れられると、そこが湿っているのがよくわかった。
とっさに、いや、と言いかけて、エレノアは必死に言葉をかみ殺す。
(いやと言ったら、アレクはやめてしまう)
エレノアは羞恥を握りつぶすようにきゅっと拳を作り、目を閉じてされるがままになった。アレクはしっとりと湿ったエレノアの白い下着に触れて、わずかに目尻を下げる。
「俺が用意したものを、つけてくれているんだね」 -
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