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あらすじ
……こんなにも濡れて。なんてかわいいんだ
塩対応だった彼が、極上に甘くなりました!没落令嬢のアスリは、異国の侯爵家の嫡男で騎士団長のギルファムと結婚することに。一緒にいるうちに仕事人間でカタブツだった彼が、気づけば極甘の旦那様に!? 「こんな劣情を抱くのはあなただけだ」と情熱的に触れられ蕩かされると愛しさが募っていく。その恋情を伝えているつもりなのに、彼は「まだ足りない」ともっともっと欲しがってきて……?
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キャラクター紹介
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アスリ
両親に先立たれ、領地も売った没落令嬢。義姉に勧められギルファムと結婚することに。マッサージが得意。 -
ギルファム
ウォルテガ帝国の侯爵家の嫡男で騎士団長。結婚に興味はなかったが、アスリが理想の女性像そのもので!?
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試し読み
「愛している、アスリ」
キスの合間に囁かれる、愛の言葉。姑によると以前のギルファムは必要最低限の言葉しか口にしない寡黙な男だったそうだが、砂糖の塊のような今のギルファムしか知らないアスリには、すんなり信じることができない。
薄い寝間着越しに乳房を包み込むように揉み、親指で先端をコリコリと弄る。胸に愛撫を集中させるのは、ギルファムのいつもの癖だ。彼はオッパイが大好きなのだ。
「アスリ……愛しているんだ。どうしたらこの気持ちがあなたに伝わるのだろうか。あぁかわいい。身も心も、そこかしこが身悶えするほどかわいい。どれだけ俺があなたを愛しているか、そっくりそのまま伝える方法があればいいのに……かわいい……好きだ……っ」
いつもの発作である。
孤高の男ギルファムは、誰が見てもわかるくらいアスリを愛し執着していた。まさに夢中、これ以上ないほどに夢中。
騎士団長としての任務中でも脳内はアスリのことでいっぱいで、帰邸後はまず真っ先にアスリを視界に収め腕にも収め、顔中にキスの雨を降らせなければ落ち着かない。もちろん、誰が見ていようともお構いなしだ。
(いくら伝わっていると告げても、ギルは理解してくれないのよね……そうだ!)
「ギル、待って」
今日も今日とてキスとともに寝台に押し倒されかけていたアスリ。しかしギルファムの胸を押し返し、首を振ってやんわりと彼を拒んだ。
「いつもわたしがギルに気持ちよくしてもらってばかりですから、今日はわたしの番。わたしがあなたを気持ちよくしますので、手出ししないでくださいませ」
夫婦となって早数ヶ月、毎晩のようにアスリは愛され、超重量級の愛を囁かれ、彼の苦悩――愛がなかなか伝わらないだのという――を聞かされていた。
もちろん誤解だ。アスリはギルファムに満たされているのに、それを彼は知らない。知ろうとしない。いくら伝えても、『そんなわけはない』と受け入れてくれないのだ。
ならば、とアスリは閃いた。いつも受け身だった自分が攻めに転じてギルファムに奉仕してみせれば、わかってもらえるかもしれない――と。
姿勢を正し、寝台の上に向き合うようにして座る。
ギルファムの金色の髪は風呂上がりの余韻を残し、まだ湿り気を帯びていた。
普段よりも色っぽい姿に、アスリの鼓動が速まっていく。
ギルファムの肩に手を添えながら、アスリは膝立ちになった。軽く触れただけでも彼の体がいかに鍛えられているか、手に取るようにわかる。
この彼の体の厚みが、アスリはとても好きだった。健康的で、頼もしくて、揺るぎない。とてつもなく安心できる肉体。
「ギル……愛しています」
(いつかギルも安心できる日が来るのかしら。わたしがギルを愛していて、ギルの愛を全て受け入れていることを、いつか認めてくれるかしら)
ギルファムの太い首に手を回し、顔を寄せて口づけをした。拒まれず、受け入れられることがアスリには嬉しい。二度三度繰り返してから、シャツのボタンに手をかける。
がしかし、その手をギルファムがむんずと掴んだ。この先はだめだと言わんばかりの強い拒絶がそこにあった。
アスリはびっくりして、ギルファムの顔を確かめた。その顔は悲しみとも怒りとも言えない感情を浮かべており、どちらにしたってこの状況を楽しんではいなそうだと察する。
(ギルは自分が『攻め』でないと許せないタイプだったのかしら? だとしたら、わたしがしようとしたことは彼にとって受け入れがたい行為だった……?)
途端にアスリは不安になり、己の浅慮を悔やんだ。
しかしギルファムもひと足先に不安に襲われていた。
「アスリ、自らしようとするなんて、まさか俺のやり方では満足できなかったのか!?」
「……え? いえ、そういう意味では――」
ギルファムの口から飛び出したのは斜め上の彼なりの推論だった。
「教えてくれアスリ。楽しんでいたのは俺だけだったのだろうか? だからこうして、アスリが俺に仕込んでくれようと!?」
「そんなまさか、違います! さっきも言ったじゃないですか、いつもあなたに気持ちよくしてもらっていると!」
仕込むだなんだと言われても、男女の関係になった異性はアスリにとってギルファムが初めて。実戦で彼から教え込まれたもの以外、アスリには知識がなかった。
だからギルファムの推測はとんでもなく見当違いなのである。
「そうじゃなくて……わたしがあなたをもっと愛したいのです。もっとあなたに尽くしたいの。ギルのわたしへの愛は、ちゃんと伝わっています。だからそのお礼も込めて、こうやってお返ししたくって」
動揺甚だしいギルファムの手を優しく握りしめたアスリは、まっすぐ己の気持ちを伝えた。
一方的に愛されるより、双方バランスよく愛し合うほうがいい。だからもう少し釣り合いが取れるよう、アスリも能動的に動いてみただけなのだと。
「そ、そうか……すまなかった」
ギルファムはすぐさま信じ、それと同時に早とちりを詫びた。シュンと肩を落とし項垂れて、唇を噛んでいる。
(あぁかわいい、わたしの旦那様。わたしだけに見せてくれる人間らしさが愛おしい)
その仕草を見ているだけで、アスリの胸は高鳴った。
とうの昔に自立を済ませた立派な殿方が、小さな相手に項垂れている姿。まるで雨に濡れた小犬のようで、いじらしさに抱きしめたくなってしまう。
「あっ――」
ところが彼を抱きしめることは叶わなかった。押し倒されたからだ。
組み敷かれ、密着する。太ももの上を大きな手が這い、寝間着がたくし上げられていく。
「俺が誤解していた、そこは申し訳ない。アスリの本意がわかった今、俺はあなたに報いたい。礼をしたいから、今夜は俺に身を任せてくれ」
「え、っと……? 今夜はって、毎晩わたし、ギルに身を任せているんですけど……?」
「気持ちはありがたいが、どうしても自分が制御できない。アスリへの愛が強すぎて、受け身でいることが難しいんだ。だから、攻守交代するのはもう少し待ってくれ」
押しつけられた彼の下半身は、すでに硬く屹立していた。
こうなってはもう、アスリにはどうしようもない。
ギルファムとの行為はいつも情熱的に始まる。終わりは見えず夜通し愛されることもあるし、なんなら休息日などは終日服を着用できないこともある。
「もう、ギルったら。わかりまし……っん、ぁ――」
だが、アスリも嫌ではなかった。愛されることは幸せなこと。求められることは幸せなこと。そしてひとりぼっちでないことは、何にも勝る幸せなこと。
寝間着のリボンを解かれて、下着もパパッと取り払われた。
ギルファムはアスリの頭からつま先までをざっと視界に入れてから、唾をゴクリと飲み込んで喉仏を大きく上下させた。それからアスリに覆い被さり、丸みのある胸に唇を寄せる。
相手が赤子ならまだしも、成人男性に執拗に吸いつかれる様は、いささか倒錯的である。肌を重ね始めた当初はそれを不思議に眺めていたアスリだったが、あまりにも毎度のことなので、今では『あぁまたか』と微笑ましく見守る癖がついてしまった。しかも、『好きなだけ食べてね』と彼に嬲られることに期待すら抱く始末。
「アスリ……あなたはいつもかわいい。形も、声も、名前も」
唾液で濡れた胸の頂に、熱い吐息がかかった。その刺激に全身が震え、恍惚のため息が溢れた。
「あぁんっあんまり強く噛まないで……んんっ、舌がっ、なんでそんな動き……っ」
いつの間にか、アスリの乳頭は硬く立ち上がっていた。そこをギルファムがすかさず見つけ、甘噛みをして先端に舌を擦りつける。
ギルファムの愛撫は胸攻めに特化していた。もともと彼は女性の乳房に並々ならぬ夢を抱いていたようだが、アスリの乳房の形、ボリューム、質感、肌艶、乳輪の大きさ……諸々全てに魅了されてしまったらしく、愛撫が胸に偏るのはもはや日常となっていた。
そのおかげで――あるいはせいで――アスリの胸は開発が進み、こうして甘噛みされただけでとろけるようになったのである。
「舌でくすぐられるのは嫌い? こうしたほうがいい?」
両胸の頂を、ギルファムは一度につまみ上げた。
「そ、それああぁ! だめ、刺激が、強すぎ……ぃ」
嫌がっているわけではない。
それを彼も承知しているので、『だめ』と言われてもお構いなしに胸にキスを落とすのだ。
「ああかわいい。アスリは素直だ……俺が求めるように反応を返してくれる」
「だって、あなたを愛して、いるから……はぁ、あ」
「俺もアスリを愛している。あなただけだ、こんな劣情を抱くのは。まるで俺が俺でないと思ってしまうほどに」
胸が揉まれ、目の前で形が次々に変わっていく。時折爪で先端を弾かれるたび、アスリは嬌声を上げた。
胸や首筋には赤い痕が徐々に増え、太ももは彼の先走りによりヌルヌルベトベト。ギルファムはいつしか服を脱いでいた。ただし性器への接触はまだだ。
「ギル……欲しい、です」
先に音を上げたのはアスリだった。
太ももに当たる熱い剛直はアスリの期待を激しく煽り、すでにシーツには愛液の染みができていた。
にもかかわらずギルファムは、胸をいじめはするものの決して繋がろうとしない。それがアスリには歯痒く、苛立ちすら感じられた。
「何が欲しい?」
潤んだ瞳でギルファムを求めるアスリに、彼は嬉しそうに微笑み尋ねた。
「あなたの……体の一部が。あなたと、つ……繋がりたい、です」
「一部でいいのか? 俺はあなたに余す所なくもらってほしいのだが」
ギルファムはいつも、アスリに求められたがっている。だからこうして言葉を求め、応えるアスリをさらに翻弄するのだ。
「……もう待てないの。これ以上焦らさないで」
手を伸ばし、ギルファムの耳を優しく摘んだ。耳たぶの柔らかな感触を味わいながら、頭を浮かせてキスをせがむ。
バレたか、と弧を描いた唇が押し当てられ、舌と舌が絡まった。時折聞こえる吸い付く音が何とも脳髄に響く。
「ギルが欲しい。ん……全部。わたしもギルに、全部、あげたいっ」
(これが本心だと、わたしは自信を持って言える。結婚のきっかけなんて関係ない。他の何者も入る余地などないくらい、わたしはギルのことを愛している)
ところが、これだけありのままを口にしているにもかかわらず、ギルファムにはあと一歩届かない。
「ありがとうアスリ。だが……足りない。どうしても飢えが収まらないんだ」
ロマンチックな言い回しはギルファムにはよくあることだ。
(まだ愛が伝わらないとか思っているのかしら。こんなに相思相愛なのに)
「ねえギル、わたしは……ああっ!」
突然、ギルファムが己の剛直をアスリの中心に押しつけた。十分に解しきれていない道は狭く、アスリの顔が痛みに歪む。
「あ、ギル、……っう、あ、ゆっくり……お願いっ」 -
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