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あらすじ
なんだこの、可愛い生き物は
偽恋人探しを邪魔するドS執事の正体は……御曹司!?鳳条綾乃は財閥令嬢。当主に見知らぬ相手との政略結婚を命じられたけれど、反発して偽の恋人を探すことに。でも専属執事・西園寺慧はちっとも協力してくれず、逆に綾乃への執着をあらわにしてくる。一体どうして!? キスされて甘く体に触れられれば、胸が高まり腰が抜けてしまいそうになる。そんなある日、慧が実は皇グループの御曹司と知り…!?
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キャラクター紹介
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鳳条(北条)綾乃(ほうじょう あやの)
鳳条財閥の一人娘。当主に勧められた婚約を断るために偽の恋人を探している。 -
西園寺慧(さいおんじ けい)
綾乃専属の執事。実は皇グループの御曹司。鳳条財閥当主の仕事も手伝っている。
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試し読み
「ど、どうしたらいいの?」
「は?」
「苦しいんでしょう? その、苦しくなくなるためには、どうすればいいの?」
慧は口を半開きにした状態で、綾乃を見上げる。
それもそうだろう。聞きようによっては完全に誘っている言葉だ。というか、ほとんどの男がそういう勘違いをしてしまう可能性があるセリフである。
当然のことながら、綾乃はそういう意味で言ってはいないのだが。
慧は疲れたような声を出した。
「放っておけば、収まりますよ。こんなもの」
「放っておけばいいのね」
そう言った後、綾乃はじっと彼の下腹部を見つめ始める。
それは男を誘っている目でも、物欲しそうにしている目でもない。
一番近いのは『観察をしている目』といった感じだ。
綾乃はしばらくそれを見つめたのち「あの……」と困惑したような顔を慧に向けた。
「こんな短時間で落ち着くわけないでしょう! 本当にバカ可愛いですね! そんなんでよく今まで無事に生きてきましたよね、ほんと!」
「慧がひどい!」
「ひどくない!」
ピシャリとそう言われ、綾乃は狼狽える。
今まで慧にこんな乱暴に叱られたことなんてない。というか、これは叱られたに入るのだろうか。どちらかといえば、怒られた、という感じである。
「なんか、ちょっと大きくなってる気がするんだけど」
「見られると、そりゃ――」
(なんか、怪我して腫れてるみたい……)
さらに布を押し上げている彼の下腹部を、綾乃はまじまじと見る。
その視線に耐えきれなかったのだろう、慧は立ち上がり、綾乃から距離を取ろうとした――のだが……
つん……
「あ」
「な!?」
気がついたら綾乃は慧の大きくなったところに触れてしまっていた。興味が湧いたと言ったら雑な理由だが、どんな感じなのだろう……と考えて、気がついたら指を伸ばしてしまっていた状態だ。
綾乃は当たっていた人差し指を慌てて離す。そして、まるで身体を折りたたむようにして慧に謝った。
「ごめんなさい! なんだか見てたら興味が出てきちゃって! こんなの、セクハラよね。嫌だったわよね」
「いや……」
「人の身体に、しかもそんなところに勝手に触るなんて、人として最低よね! 本当にごめんなさい!」
「もしかしてそれ、謝っているのに見せかけて、私のこと責めてますか?」
慧は頬を引き攣らせるが、綾乃はなんで自分の発言が彼を責めることになるのかわからずに首を捻った。
「別にそんなつもりはないけれど……」
「そうですか」
「でも、大丈夫? やっぱりなんか、痛そうだけど」
綾乃の気遣うような視線に、慧は眉間の皺を揉んだ。
「大丈夫じゃなかったら、どうしてくれるんですか?」
「え?」
「貴女が何かさせてくれるんですか?」
「何か?」
「ナニか」
含みを持ったその言葉に、綾乃はかぁっと顔を熱くさせた。両手で顔を覆う。
(『ナニか』ってそういうことよね!? えっちなことを期待されているわけよね!?)
綾乃の脳裏には先ほどまでのツヤめかしいやりとりが浮かぶ。ああいう行為をもう一度求められているのだとしたら、自分には無理だ。彼との行為が無理なのではなくて、単純に恥ずかしい。あんな羞恥にもう一度耐えられる自信がない。
(でも……)
男の人はそのままだと苦しいとか聞いたことがある。見たところ慧は平気そうだが、もしかしたらそれもやせ我慢をしているだけかもしれない。
何やら考え込んでしまった綾乃に慧は眉尻を下げた。
「そんなに赤くならなくても、大丈夫ですよ。冗談ですから」
「え、えっと。どうすればいいの?」
「は?」
「慧が苦しいのは嫌だもの。どうやれば苦しくなくなるのか教えて! できる限り――」
「あのですね!」
怒鳴り声のようなその声に綾乃は身体をびくつかせた後、慧を見上げた。
視線が絡みつくと同時に、彼の目の縁が赤く染まり、口が真一文字に結ばれる。
小首を傾げれば、わずかにたたらを踏んで彼はのけぞった。
「慧?」
「……」
「あの、私……」
慧は深く息を吐き、首を振った。そして、声を低くさせる。
「貴女は自分が言ったことの意味を正しく理解できていますか?」
「た、多分? その、あの、出すお手伝いをすればいいのよね?」
「どんなことをするのかは?」
「ざ、雑誌で読んだわ! 友達にも聞いたことが……」
「したことは?」
「あ、あるわけないでしょう!」
真っ赤な顔で否定すると、慧はどこかほっとしたような表情になった。
慧は綾乃の隣に座ると、綾乃を覗き込んできた。
「本当にいいんですか?」
「え? あの。え、えっちなことはだめよ?」
「…………えっちなことはダメ?」
意味がわからないという顔をする慧に、綾乃は両手をぶんぶんと振る。
「あ、あの、その! 入れたりするのはダメで。あの、手とか、なら? く、口はだめよ? えっちだもの!」
「手でも十分えっちだと思いますが?」
「そ、それはそうなんだけど! く、口は、こ、恋人同士じゃないと」
綾乃はもじもじとつま先を擦り合わせる。その後、慧の方を見たかと思うと、顔をますます赤くさせ、両手で顔を隠した。
そして……
「なんか、はずかしいわね……」
と、はにかんだ。
その表情に今度はなぜか慧が顔を覆う。
「あぁー!! ………………したい……」
「え? 何を?」
「なんでもありません」
「したいって? 何かしたいことでもあった?」
「あまりしつこいと怒りますよ」
「え。ごめんなさい?」
綾乃はよくわからないまま謝る。とにかく先ほどのセリフには深く触れない方がいいのだろう。
「本当になんとかしてくれるんですか?」
「えぇ。私にできることなら……」
「入れなかったら何をしてもいいというのも?」
「く、口もダメよ?」
「わかっていますよ」
執拗に確認してくる慧に、綾乃は唇を尖らせた。
「というかそんなに何度も確認しなくてもいいわよ。私、そんなに信用ない?」
「違いますよ。綾乃様のために確認しているわけじゃありません」
「え?」
「ここまで確認しているんですから、今更少々嫌だって言ってもやめてやりませんよ……という、私なりの意思表示です」
慧はいつもの彼らしい黒い笑みを湛え、綾乃の手を握りしめた。◆◇◆
壁に手を当てて立っている綾乃を、慧は後ろからぎゅっと抱きしめた。そのまま頭一つ分低い彼女の耳を食めば、腕の中の小さな身体はこれでもかと反応する。
綾乃はこちらを振り返り声を震わせた。
「そ、それって必要なの?」
「必要ですよ。雰囲気って大事じゃないですか?」
「それは大事かもしれないけれど……」
正直、こんなにちょろくて大丈夫かと心配になってしまう。
彼女は自分のことを信頼してこうして身体を任せてくれているのだろうが、この格好からならいくらでも襲えるのだ。彼女の身体を無理やり開いて、自分のものにすることができてしまう。
(だけど――)
自分は彼女を襲いたいわけではない。犯したいわけではない。身体はもちろん繋げたいけれど、自分が望んでいるのはそれ以上のことだ。
彼女の心も身体も全部が欲しい。
求めているのはそれである。それなら、今ここで欲望のままに全てを奪ってはダメだろう。身体が手に入っても、それでは心が離れていってしまう。せっかくここまで信用してもらっているのに、その信用まで失ってしまう。
綾乃に自分が婚約者だと打ち明けたら、その培ってきた信用だって地に落ちてしまうかもしれないが、だとしても今ここで全て落としてしまう必要はないだろう。
「ここからどうすればいいの? 私、わからないんだけれど……」
「大丈夫ですよ。私が教えますから」
不安そうな彼女にそう耳打ちをして、綾乃のタイトスカートを持ち上げた。そうして、ストッキングのウエスト部分に手を這わせる。ストッキングとショーツを一緒にずらせば、綾乃は赤ら顔で振り返った。
「ま、まってまって! ちょっと待って! 慧、変なことしようとしてない? さっき入れちゃダメだって――」
「入れませんよ。挟んでもらうだけです」
「はさ――」
綾乃がその言葉を続ける前に、お尻の方から割れ目に指を這わせた。ぬるりとした愛蜜の感触に思わず口角が上がる。
「これなら潤滑剤を使う必要もないですね。……そんなに気持ちがよかったんですか?」
「だって、慧が――」
「気持ちよかったみたいでよかったです」
そう言って耳にキスを落とすと、彼女は真っ赤になったまま動かなくなった。
寛げたズボンから自分の雄を取り出し臀部につけると、彼女の背筋が伸びる。
「慧、それ――」
「見ない方がいいですよ。怖くなっちゃいますから」
振り返った彼女をそう押しとどめ、お尻の柔肉の間に滾った己を擦り付ける。
秘所とショーツの間に丸い切っ先を突っ込むと、彼女は「ひぅ」と小さな悲鳴をあげた。
「足、閉じていてくださいね」
素直な彼女は内腿に力を入れる。
急に狭くなったその場所に、慧は自分の根をずっぷりと突き刺した。
「――っ!」
「はぁ……」
動かそうと思っていないのに腰が前後にゆらゆらと揺れる。これはもう本能だろう。
慧はその衝動のままに綾乃に腰を打ち付けた。
「ひゃぁう!」
腰を動かすたびに彼女の蜜が絡みつき、潤んだ肉が雄を舐める。
「あ、あぁ、ぁん、や、んん」
腰を打ち付けるのと同じリズムで綾乃が喘ぐ。その声が耳から入り、毒となって全身の血液を沸騰させる。身体中が熱くなると共に、下腹部にも熱が溜まって、また一段と雄が大きく膨らんだ。 -
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