-
試し読み
グレイの手がメリッサの髪を掻き上げる。
「そんなにおびえなくても大丈夫ですよ。ちゃんと我慢しますから」
「あの」
「でも、もう一回だけ。良いですか?」
再び後頭部を引き寄せられ、先ほどと同じように唇が合わさった。しかし今度は、先ほどのような可愛いキスではなかった。まるで噛みつくような深いキスに、感覚の全てを奪われていくような気がした。
「んふっ」
息が上手にできなくて、メリッサは彼の上着をぎゅっと掴む。上下の唇を割って入ってきた舌は、彼女のそれを揉みほぐし、ねっとりと絡んでくる。まるで互いの唾液を交換するかのような行為に、頭の芯がじりじりと焼けただれていく。
「んんっ」
「はぁっ」
余裕のない彼の息継ぎに、身体の奥底がじわりと滴った。あまりの切なさにメリッサは両膝を擦り合わせてしまう。
(抱いてほしい)
素直にそう思った。心よりも早く準備ができていた彼女の身体は、もうしっかりと期待をしてしまっている。
グレイはメリッサの下唇を食み、惜しむようにゆっくりと唇を離した。そして、何かを振り切るように頭を振る。
「これ以上は、ダメですね。……止まれなくなる」
なんとか冷静さを取り戻そうとする彼の手を、メリッサは取った。そして、そのまま自分の胸に押し当てる。指と指の間から白い肉が盛り上がり、メリッサは恥ずかしさに目を伏せる。
「メリッサ?」
「止まらなくても、大丈夫です」
「それは……」
「……グレイ様の好きにしてください」
その瞬間、俯いた視界の中で、彼の喉仏が上下するのが見えた。気がつけば、馬車の中で行為は始まっていた。メリッサは向かい合う形でグレイの膝の上に座っており、彼女の首回りにはいくつもの赤い痕が散っていた。荒々しく剥かれたドレスは腰のあたりで止まってしまっていて、コルセットも紐を解かれ、緩められている。振動のたびに揺れる胸の先端は、もう彼の唾液でてらてらと妖しく艶めいていた。
「はっ、ぁんんっ!」
グレイが太股を撫で回すたびに、メリッサの腰は跳ねる。彼の手は、もうすでにスカートの中へ入り込んでしまっていた。
「もう濡れてますね」
グレイは下着越しにメリッサの割れ目を撫でる。あふれ出た蜜を指にこすりつけながら、彼は熱い吐息をついた。
「触りますよ?」
別に予告なんていらないのに、彼は律儀にもそう言ってドロワーズの紐を緩ませた。中に入ってきた彼の手はメリッサの中心に触れる。
「ぁっ!」
生まれて初めて他人にそんなところを触られ、腰が跳ねた。グレイは彼女の腰を支えながらゆっくりと刺激を加えていく。
「——ぁっ、あぁっ」
「あまり感じやすいのも可哀想ですね」
擽るように指が動く。まだ誰も入ったことのない彼女の溝は、ぴっちりと閉じたまま彼の指を拒絶するが、それとは裏腹に彼の侵入を喜ぶようにたっぷりと蜜を滴らせている。
「初めてなのに、こんなに蜜を滴らせて。もしかして、私が毎日胸を触るたびに、こんな状態でした?」
「——っ!」
言葉に出さなくても、表情が馬鹿正直に答えてしまう。グレイはそんなメリッサの表情を見て、彼女を抱き寄せた。そして、耳元で囁く。
「それなら、もっと早く抱いておけばよかった」
「ぁ」
「これでも結構、我慢していたんですよ?」
「ん、あぁっ!」
グレイはメリッサの耳朶を甘噛みしながら、指を滑らせる。充血した赤い実は人差し指で丹念に押しつぶされた。
「ん——っ!」
快感から逃れたくて、グレイの上着に皺を寄せる。すると、彼が喉の奥で機嫌良く笑う声がした。
「メリッサ、力を抜いて」
「ぁ」
蜜をたっぷりとまとわせた指が、メリッサの中へ侵入してくる。まだ入り口をこじ開けたというだけで、第二関節ほどまでしか入っていないが、今までに感じたことのない異物感に、メリッサは思わず腰を引いた。
「やっ」
「君が煽ったんです。……逃げるのはなしですよ」
そう言って彼は片方の手でメリッサの腰を掴んだまま、最後まで指を突き立ててきた。
「ひゃぁ——っ」
入っているのは指一本だけなのに、身体を開かれる痛みがメリッサを襲う。縋ってきたメリッサの背を撫でながら、グレイは優しい声を出した。
「痛いですよね、すみません。すぐに解してあげますから」
そう言うやいなや、彼の指はメリッサの中をかき混ぜ始める。出して入れて、円を描く。ちゅくちゅくという厭らしい水音が車内に響き始めるころには、痛みよりも快感の方が大きくなっていた。
「あ、あぁ、ぁっ」
「ホント、君は可愛いすぎますね」
「はぁっ、んん——」
気がつけば、指は二本に増やされていた。しかし、最初のころのような痛みはない。あるのは押し上げられるような快感だけだ。
「あ、ぁ、ぁ」
もう何も考えられない。腰は自然と揺らめいて、グレイの指をぎゅうぎゅうと締め付ける。
「一度イっておきましょうか?」
「え?」
「まさかここで最後までするわけにはいきませんし。それに、もうすぐ屋敷についてしまいますから」
グレイの言葉に、理性がわずかに戻ってくる。窓を見れば、遠くの方に彼の屋敷の明かりが見えた。
「あっ……」
(ど、どうしよう……)
このままでは、ベティやレスリーにこの格好を見られてしまう。乱れた髪にドレス。首筋に残る沢山の赤。火照った頬に、潤んだ瞳。この状況を見れば、馬車の中で何があったのかは簡単に察せられてしまうだろう。
「あ、あの——」
「大丈夫ですよ。君のこんな姿、他の者に見せるわけありませんからね」
そう言いながら、彼の指はさらにメリッサの最奥を抉った。
「あぅ……」
「だから後は私に任せて、安心してイってください」
彼の指の動きが激しくなる。立ってきた新芽も再び潰され、メリッサは喘ぎ声を上げる。
「ああぁっ!」
何かが上ってくる。視界がチカチカと暗転を繰り返し、メリッサの蜜壺がグレイの指を引き込むようににきゅぅっと絞まった。
「あぁんんん——!!」
瞬間、メリッサの中で何かが弾けた。膣が痙攣するのがわかる。彼が指を抜くと同時に、メリッサの意識は遠のき、深く沈み込むのだった。(あれ?)
気がついた時には、メリッサはもう寝台の上にいた。着ていたドレスは脱がされており、一糸まとわぬ身体には申し訳なさげにシーツが一枚掛かっているだけだ。
「私——……」
「気がつきましたか?」
声のした方向を見れば、予想通りにグレイがいた。彼はちょうど着ていたシャツを脱いでいるところだった。隙間から見える彼の均整の取れた身体に、メリッサの心臓が高鳴る。机仕事の方が得意そうなのに、脱いだら筋肉質とかちょっと卑怯すぎると思う。
視線を逸らしたメリッサをどう思ったのか、グレイは彼女を安心させるような優しい声を出す。
「大丈夫ですよ。君のあられもない姿は誰にも見られていませんから」
脱いだシャツを床に落としながら、彼はメリッサの方へやってくる。そうして眼鏡を寝台のサイドテーブルに置き、彼女を組み敷いた。
「私が外套でくるんで運び出しました。馬車の方に少しシミがついていたので何が起こったかは知られてしまったでしょうが。ま、夫婦になる二人ですからね、大目に見てもらいましょう」
「シミ?」
「私がいっぱい掻き出してしまいましたからね」
馬車についてしまったというシミの正体に気がついて、メリッサはもうこれ以上はないというぐらい赤くなる。身体を見られなかったのは良いことだが、これではあまり変わらない。
グレイは恥ずかしがるメリッサの膝を持ち、そのまま大きく広げた。
「あぁっ!」
「メリッサ、受け入れてくれますよね?」
彼はズボンから猛った己を取り出す。その大きさと長さに、彼女は息を呑んだ。指とではとても比較にならない。
「ちょっ、それ……」
「今更、ダメだなんて言わないでくださいね」
未だに水分をたっぷりと含んでいるメリッサの溝にグレイの丸い先端が埋まる。一度達したとはいえ、彼女の身体はまだ男性を知らないのだ。ぎちぎちと押し入られる感覚に、メリッサの目尻に涙が浮かぶ。
「んん——」
「やっぱり最初は痛いですよね。すみません」
苦しそうな顔でグレイはそう言い、彼女の額を撫でた。
痛いだけではない。気持ちいい感覚ももちろんある。けれど、それを言葉にできるほどの余裕は、今のメリッサにはなかった。
グレイはゆっくりと出し入れしながら、メリッサの中へ進んでくる。
「あぁっ!」
「ん。気持ちいいですよ」
「んん——っ」
内臓が押し上げられる感覚に、メリッサは喉を晒す。お腹の中はもうパンパンなのに、彼はまだ半分も埋まっていなかった。他の人を知らないのでよくわからないが、彼のモノはきっと他の人のより大きい気がする。
「はぁ。……熱いですね」
ゆっくりと腰を動かしながら、彼はそう言う。まるでメリッサの身体を堪能しているかのような響きに、彼女の身体はグレイを締め上げた。
「んっ。……あまり甘えてこないでください。手加減ができなくなってしまいますから」
「だって。身体が、勝手に——んっ」
また少し、奥に進んできた彼の雄がメリッサの弱いところを刺激する。ゆっくりと擦りあげられて、腰がさらなる刺激を求めるようにゆらゆらと揺れる。
「あぁ……」
(なんでこんなに——)
気持ちがいいのだろうか。最初は泣くほど痛いって聞いていたのに、初めてを迎えたメリッサの身体は明らかに喜んでいる。そして、さらに——
(もっと……)
熱に浮かされた頭は、本能のままにそう求めてしまった。
もっと奥を突いてほしい。ぐちゃぐちゃに、乱暴にでも構わないから、もっと奥、さらに奥を、彼のモノで穿ってほしい。
じりじりと奥に進んでくるのがまるで拷問のようだ。全身が甘い疼きに襲われているのに、彼はメリッサの身体を気遣ってゆっくりにしか進んでくれない。
(も、だめ) -
関連作品