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試し読み
「だめっ……こんなところで」
「ここには誰も来ない」
「でも……もし来たら……」
エミーアは口ではそう言ったが、もう周りを気にしている余裕がなかった。
「きっと、ここもなめてほしくなっているはずだ」
つんっと突起を弾かれる。
「やっ……そんなこと……ない」
エミーアがのけぞった次の瞬間にはアドニスのくちびるが挟んでいた。
「や……ああっ……」
舌で蹂躙されてエミーアは悶えた。してほしいと望んでいたはずなのに、刺激が強すぎて、怖くなる。
「他にも触ってほしいところがあるだろう?」
エミーアは、首を振った。
「そんなの……ないわ」
「素直になるまで待とう」
再びアドニスのくちびるがエミーアの乳房の先端をついばんだ。反対のつぼみは指でこりこりと転がされる。
「……やだっ……はあっ」
体中が熱くなってくる。ビクビクと震える。体の中心に欲望がたまっていく。アドニスに触れてほしい。もどかしくてたまらない。
「やあっ……あっ」
舌で責められてエミーアの体は跳ねた。もう何も考えられなくなる。次々としびれが襲ってくる。
そんなエミーアのなまめかしい姿をアドニスは食い入るように見つめた。
(……この姿を誰にも見せたくない)
ドレスに身を包んだまま、荒れた庭園で悶えているエミーアの姿は、美しかった。聖と俗がこの細い体に同居している。
自分がどんな恐ろしいことをしているのか、アドニスはわかっていた。それでも止められなかった。
「……触って」
エミーアがささやいた。
「ドレスの中だね」
エミーアが小さくうなずく。その様子がいとおしすぎて、アドニスは理性を保つために深呼吸をした。
ドレスの裾をまくりあげ、下着を下ろすと、エミーアの濡れてやわらかく震える花びらに指でそっと触れた。
「溶けている」
少し触れただけで、エミーアは体を震わせてアドニスに寄りかかった。
とぷんと指先をエミーアの中に沈める。それからゆっくりと動かし始める。エミーアの可愛い悲鳴が、アドニスの指で奏でられる。
「……んっ」
エミーアはうなずいて、アドニスにしがみついた。
「……あっ……やああっ」
エミーアはアドニスの腕の中で鋭く体を震わせて越えた。それでもアドニスは可愛がるのをやめようとしなかった。
エミーアは、いやいやと首を振って、熱に浮かされたようにアドニスの服を握った。
「わたし……変なの。アドニスに触られたら変になるの」
アドニスはエミーアにキスをする。もう何も考えられないように言葉も一緒に食べてしまう。
(それは、俺が君を愛しているからだ)
アドニスは心の中で応える。エミーアが他の男のところに嫁いでも構わないなんて嘘だった。他の男がエミーアの可愛い顔を見つめて、くちびるに口づけて、白い肌に触れるなんて、想像しただけで死んでしまいたくなる。
(どうして君は王女なんだ。どうして俺は王族じゃないんだ)
「……ああっ……やっ……ねえ、何か怖い……死んじゃう」
「大丈夫だ。エミーア。俺がついている。怖くないよ。そこを越えるともっと気持ちよくなるんだ。力を抜いて任せてごらん」
「ああっ……はあっ……」
腕の中のエミーアは、気持ちよさそうに体を震わせている。体力の限界まで、何度でも達(い)かせたかった。エミーアの体が他のものでは満足できなくなればいい。
熟れきった花びらがはらはらと落ちるようにエミーアは今までで一番深く達した。
アドニスは自分の上着をベンチに置いてエミーアを座らせると自分の胸に引き寄せてゆっくりと抱きしめた。遠目には、アドニスの姿はわかっても、抱きしめられている女性が誰かはわからないだろう。
エミーアの髪に顔をうずめる。
(このまま時が止まればいいのに)
アドニスは泣きたくなるくらい切実な思いで、そう願った。 -
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