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試し読み
シルヴィは慌てて答える。
「あ、あなたは怖くない。その、とても優しいと思う。わたしのどこを好きになったかわからないけど……」
すると、彼が顔を近づけてきて、ふんわりと頬にキスをした。左腕をシルヴィのうなじに回して、抱きかかえるように横たわった。右手で、つつと胸のあたりを撫でつけていたかと思うと、すっかり凝って頭を出した乳首をつまんでひねった。
「歌を歌っている姿と声にまず魅了されました。ですが、それだけではあなたのことはわからない。いろいろな人からあなたの話を聞くにつれ、あなたがとても気高い女{ひと}だとわかったのです。あなたのことを知れば知るほど、あなたの苦労も見えてきました。俺はあなたを支えたい、守りたいと思うようになって……それを抑えきれず、あなたに求愛してしまいました……あんな形で愛を告白するのは軽率だったと今は反省しています。さぞかし俺は馬鹿者に見えたことでしょう。まるであなたの上っ面にだけ惑わされている男だと……けれどこれだけは確かなのです。俺はあなたを一目見たときから心を奪われて、夜も昼もなくあなたに恋い焦がれていると……」
ラファエルの紡ぎ出す愛の言葉がより体に快感をもたらす。胸に広がる温かな気持ちとあいまって乳首への刺激が喉を震わせてしまう。
「ん……でも、それは……勘違いかもしれないわ、よ……」
「いいえ、あなたは俺が感じたとおりの女でした。まるで騙すようにあなたをここに呼び寄せたと言うのに……。すみません。もっと正々堂々とあなたに求婚すべきでしたね。そうしたらあなたが不安になることもなかったのに……」
そんなことはない。むしろ感謝しているくらいだ。
「……あの……あなたに感謝してるの。だって……ふ……あなたのお陰で、弟妹たちが学校に行け、るんだも……」
より一層突端をいじる指の動きが細やかにそれでいて激しくなる。
彼の逞しい胸に手を当てて、軽く爪を立ててしまう。
「感謝してるなんて言わないでください。あなたにすぐに俺のことを好きになれとは言いませんから。少しずつ俺のことを知ってください」
声は冷静で優しいのに、指には情熱と欲望が篭もっている。その唇が、再びシルヴィの柔らかで小さな唇を覆い、奪うように激しく貪ってくる。
「ん……んん」
胸に与えられる感覚が次第に自分を衝動的にする。その奥の熱で火照る部分が気になって仕方なくて、両腿をすりあわせてしまう。空いた片手でシーツを握りしめて、快感にどうにかなってしまいそうな体を繋ぎ止めようともがいた。
それを感じ取ったのか、ラファエルが胸をいじっていた指を下腹へと移し、さらにその奥へと這わせていく。夜着の裾をたくし上げ、下着をつけていない素肌に触れる。
熱くなって汗ばんだ下半身に冷たい空気が当たる。
「ん……」
キスに言葉を奪われたまま、シルヴィはラファエルが何をしようとしているのかわからなくて、彼の手に手を添えた。
「やっぱり我慢できそうにありません……。あなたを手荒く扱ってしまったら……今から謝っておきます」
金色の恥毛の奥に指が滑り込み、熱く疼く小さな粒に触れた。包皮に隠れた花の芽を指で優しく剥いていく。ぷっくりと膨れたそこを、これ以上ないくらいの優しさで触れてくる。
「あっ」
キスをされながら、シルヴィは思わず叫んだ。
ビリリと電流が下半身を駆け抜けていった。そのもっと奥にじんと熱が篭もり、恥ずかしい部分がひくひくと震えている。
恥ずかしくて股を閉じるけれど、赤い粒だけは頭を出したまま指になぶられる。粒の周りを擦るうちに、どうしようもなく身悶えする部分を見つけられてしまって、なおもそこばかり責められる。
「ひゃぅ……ふぁ……っん」
その声すら、ラファエルの唇に飲み込まれてしまう。
チュプチュプと舌の中を蹂躙されて頭がぼうっとするたびに、粒がひくつくような甘い電流を与えられる。何度も何度も甘い波が押し寄せてきて、込み上げてくる感覚に声が上がる。そのたびに全身がブルブルと震えた。
ますますラファエルの指の動きが激しくなっていく。まるでシルヴィの声に刺激されたかのよう。
弦楽器を爪弾くように巧みにシルヴィの快感を呼び覚ます。そのたびに彼女は止めようのない喘ぎ声を奏でた。彼女の官能を自在に引き出して強弱をつけ、どんどんやるせない気分にさせる。
内腿に生温かなものが伝い落ちていくのを感じる。花芽の奥に咲く花房は火がついたように熱く、蜜がしとどに溢れ出して滴り落ちた。
粒を爪先でかかれるたびにじゅんと蜜が溢{こぼ}れ、カッと熱い炎に全身が包まれる。
思考があやふやになっていき、全身を覆う愉悦に翻弄されてしまう。じっとしていられないほど自分を突き動かす情欲に心がついていけない。
快楽の波が大きくうねりながら花房の奥から押し寄せてきて、あっという間に意識を呑み込まれた。
生まれて初めて味わった例えようのない心地よさに全身がフルフルと震えて、甘い痺れが染み渡る。ぎゅっとシーツを握りしめていた指の力が緩んだ。
息も継げないほど何度も口づけを交わし、まだ冷めやらない快楽の炎に指戯が油を注ぐ。無意識に両腿が開き、ラファエルの戯れを受け入れる。
クチュリと淫靡な水音が響き熱い花房に指が挿し込まれる。その大きさにシルヴィは息を呑む。彼女の驚きすら彼の舌が絡め取って吸い尽くす。
「んっ……」
指の太さに怖気づいて腰が引き気味になっても、ラファエルの指はどこまでもシルヴィを追い詰めた。逃げようのない彼の胸の中で力のない抵抗をしてみせるけれど、彼から自由になることすらできない。
次第に花房の中の存在が薄まり始めた。安堵の息をついたとき、ラファエルの指がゆっくりと動き出した。クチュクチュといういやらしい音を立てて指が抜き出しされる。
違和感しかなかったのに、いつの間にか腰がビクンと跳ねてしまう場所を見つけられて、そこばかり責め立てられる。
腰が揺らいでしまうけれど、それ以上に腹の中にもやもやとした塊が溜まっていく。何もかも吐き出したいのに、それができないもどかしさ。
なぜか、もっと腰が揺らいでしまって止められない。指の動きに合わせてもっと奥まで指が欲しくて堪らなくなってきた。
(すごい、わたし、いやらしい……)
羞恥心に胸の内が震える。いやだと言いたいのに唇は捕らわれて、喘ぎ声を上げるしか術がない。自分の奥底から込み上げてくる得体の知れない大きな何かが、徐々に自分を支配していくのがわかった。
なんと言えばいいのかわからないまま、その何かに呑み込まれた瞬間、ひときわ大きな声が漏れた。
「んあぁあ……!」
愉悦というよりも体を痺れさせる大きな波に呑まれて、頭の芯までおかしくなりそうだった。あまりにもそれが激しすぎて、肩で息をしてしまう。花房がひくひくと痙攣している。蕩けるような気だるさがやってきた。
キスするのも忘れて喘いでいると、ラファエルが優しげに囁く。
「気持ちよかったですか? 蕩けるような顔がとても素敵ですよ……今度は俺があなたを味わい尽くしますからね」
おもむろに彼がシャツを脱ぐ。しっとりと汗ばんだ肌は程よく焼けていて、たくましさをさらに引き立てている。盛り上がった胸の筋肉、割れた腹筋から彼が常日頃から体を鍛えていることが伺われた。
(なんだろう……綺麗なのはラファエルのほうだ。なんだか……このひとは他の貴族と少し違う。すごく親しみやすい……)
うっとりとした目つきで裸になったラファエルを見上げた。
「その瞳、俺のほうが魅了されそうです……」
??あ……
(そんな目で見てた……?)
今まで恥ずかしさを忘れていたのに、途端に我に返る。胸の高鳴りが蘇ってきて、頬が上気する。
「いやだったら言ってくださいね?」
そう言って、ラファエルがシルヴィの両足を開き、下半身をその間に割り込ませた。
大きく股を裂かれて、それがとてつもなく恥ずかしい。それまで大胆だったことも忘れ、思わず両手で顔を隠す。
「駄目ですよ? その美しい顔を隠しては。俺によく見せて……」
そっとラファエルの手が、シルヴィの両手を顔から外した。月の光差す、濃淡に陰る彼の面が薄っすらと暗闇に浮かぶ。その柔和な線が明るい場所で見るよりも、彼をひときわ神秘的に見せた。
「あ、の……」
思わず声が出た。
「なんでしょう?」
「あの……あなたのほうが綺麗だわ……わたしよりずっと」
ふっと彼の顔が緩む。
「ありがとう。あなたにそう言ってもらえると自分の顔に自信が持てますね」
そう言ってラファエルが上半身をかがめると、シルヴィにキスをした。舌で彼女の舌を絡めて激しく音を立てる。そうすることで彼女のすべてが自分のものだと主張しているようだ。
キスをしながら、彼がシルヴィの股間に何かを当てた。熱くたぎるそれは指よりも太いように思えた。
それが何かと考えると羞恥と慄きにシルヴィの心は震える。男女が何をするかは知らなくても、体の構造くらいは知っている。 -
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