書籍紹介
皇帝の甘美な戯れ~千一夜の蜜夢~
皇帝の甘美な戯れ~千一夜の蜜夢~
ISBN:978-4-596-58391-8
ページ:250
発売日:2018年6月16日
定価:本体580円+税
  • あらすじ

    砂漠の漆黒王との甘く淫らな千夜一夜の恋物語♥

    没落貴族の令嬢・レティシアは、サルマーンの皇帝・サイードに攫われるように彼の国へと連れてこられてしまう。「帰さないよ。君は私だけのものだ」見知らぬ異国の風景、豪奢な暮らし、夜ごとサイードに甘く優しく愛される日々。サイードの手で花開かされ身も心も蕩かされていくけれど、彼の妻候補として扱われることに戸惑ってしまい……?

  • キャラクター紹介
    • heroine_VBL161

      レティシア・ウィンスレット
      夢に向かって突き進む没落男爵家の娘。明るく前向きで、思いやりがあり健気。

    • hero_VBL161

      サイード・アクバル
      オッドアイの長身で麗しい紳士として現れるが、身分はサルマーン王国皇帝陛下。

  • 試し読み

    「ああ、ツンと尖ってきた……。可愛いよ。レティシア」
    「んっ……!」
     サイードがレティシアの耳に唇を押しつけるようにして囁き、その尖りを更に爪弾く。
     耳に忍び込む吐息が、笑いを含んだ囁きが、そして胸への刺激が――そのすべてが甘い痺れとなって全身に広がってゆく。すると、どうしてだろう? 下腹部がなんだかとても切なくなってくる。
    「……ん、ぅ……」
     思わず、ブルブルと身を震わせる。
     それは不思議な感覚だった。サイードが触れているのは耳や首や頬、そして胸なのに、触れられてもいない下腹部が熱くなり、疼くのだから。
    「レティシア……」
     そんな自分の身体に戸惑い震えるレティシアに、サイードが甘いキスをくれる。
    「もしかして、怖い……? 大丈夫。これは、夢。男と女がともに見る、一夜の夢だよ。極上のワインのように、甘く君を酔わす夢――」
     サイードの大きな手が、泣きたくなるほど優しく、レティシアの髪を梳る。
     レティシアはそっと目蓋を持ち上げ、穏やかに微笑むサイードを見つめた。
    「……ゆ、め……?」
    「――そう。夢を見せてあげると言ったろう?」
     サイードがレティシアを抱き締め、額に唇を押しつける。
    「君は、憧れの世界に足を踏み入れた。美しく装い、社交界へ。最高の料理を堪能して、世界中で称賛されるオペラを記憶に焼きつけた」
     まるでレティシアをあやすかのような、穏やかな声。
    「次は全く未知の世界だ。異国の知らない景色、知らない言葉、知らない文化に触れた。それらは大いに君の好奇心を刺激したはず。そして君の想像力を更に豊かにするはずだ。もっと様々なことを学べば、君の見識はどんどん広がってゆくだろう。そうだね?」
    「ええ……」
    「では、今度は男女の世界を」
    「男女の、世界……?」
    「そう」
     サイードが指で誘うようにレティシアの顎を持ち上げ、黒と金の目を細める。
    「君は男というものを知らなくては。そして、君が女であることも」
     その唇が、再び近づく。
    「これは、君が作家になるために必要な『夢』だ」
    「作家に、なるために……?」
    「そう。読者に夢を見せる作家こそ、夢を見なくては……」
    「……! 作家に……」
     作家になるために、夢を見る――。
    「……ん……」
     唇が重なる。
     そのままゆっくりと、ソファーに押し倒される。
    「……ッ……」
     折り重なった身体――。サイード重みに、ゾクリと背中が戦慄いた。
    「あ……」
    「美しいレティシア……」
     吐息だけの囁きが、唇の隙間から忍び込んでくる。
    「すべて、私に任せて……」
    「……あ……サイー……」
     名前を最後まで呼ぶことはできなかった。
     再び唇を塞がれる。そのまま奥へと入り込んできた舌が、レティシアのそれを、そして心までもを絡め取ってしまう。
    「……ん、う……」 
     熱い手が、長い指が、レティシアの肌を滑る。まるで、手でもレティシアを味わうかのように。
     舌を吸い、深く絡め、蜜を私の喉の奥へと流しこみながら。
    「……ふ……」
    「……レティシア……」
     色めいた囁きに、また下腹部が切なくなる。
     サイードの手がレティシアの胸を包み込み、優しく円を描くように揉みしだく。更にはツンとした尖りを指で押し潰して、捏ね、摘み、つねり、引っ掻く。
     こめかみに、頬に、耳にとキスの雨を降らしながら。
    「ん、ぅ……あ、ん……」
    「……レティシア……」
     そして、何度もレティシアの名前を紡ぐ。甘く、熱っぽく。
    「……っ……ん……!」
     それだけで、下腹部の疼きはますます酷くなってゆく。レティシアは唇を噛んで、身を捩った。
    「……ふ……ん……」
    「ああ……美しいレティシア……」
    「ん、ぁ……サイード……」
     サイードの唇が、舌が、手が、指が、レティシアを味わう。
     身体の中の茹だる熱がどんどん燃え広がっていって、足の間が潤み出す。どうしてなのだろう。どうしてそこなのだろう。一切触れられていないのにもかかわらず。
    (な、何が……?)
     自分は一体どうしてしまったのだろう?

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