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あらすじ
百戦錬磨なおじさまが、無垢な乙女に恋の手ほどき
父が亡くなり、異母姉たちに金持ちの貴族の元へ売られることになったリーネ。愛されることに不慣れで流されるままに生きてきたが、父の元部下だというラディアスと知り合い、その包容力に惹かれていく。「俺の指が、おまえをかわいがっているんだよ」甘い囁きと共に与えられる、熱い口づけと淫らな愛撫。愛される悦びを教えられたリーネは……!?
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試し読み
「しかし、悔しいな」
「え?」
思わず顔を上げてラディアスを見つめると、琥珀色の瞳が甘く揺らめく。
「俺ばかりが、おまえを欲しがっているようだ」
背中を撫でていた彼の手が、愛おしそうにリーネの金糸の髪に指を差し込む。さらりと流れるそれを一房手にしたラディアスが、自分のほうへと引き寄せた。朝陽に照らされ、きらきらと輝く金糸の髪を辿るように視線を向けると、そこへ愛おしげに唇を押し付ける。
「……ッ」
まるで、愛している、と告げるようなくちづけを前に、唇のぬくもりが伝わってくるようだった。いいなぁ。髪にくちづけるラディアスを見ながら、無意識にそんなことを思う。すると、ラディアスはちらりと視線だけを向けた。ふ、と口元を綻ばせたラディアスを見つめ、まばたきを繰り返すリーネだったが、髪を放した彼によって身体を引き上げられる。
「わわ──ん……ぅ」
胸元から、彼の唇へ。触れたぬくもりから、やわらかさが伝わり、彼の唇が触れていることに気づく。しばらく目を瞬かせていたリーネだったが、昨夜の彼の甘い声が脳裏に蘇り、そっとまぶたを下ろす。
「ん、……ふ、んん」
気持ちいい。
やわらかな唇がリーネのそれを食み、ちろりと舌先で舐めてくる。もっと触れたいと思うよりも先に、リーネは彼の舌先に己のそれを絡めていた。舌先が触れ、教えられたように舌を動かす。ラディアスの舌は慣れたようにリーネの舌先を絡めとられ、彼の口の中でちゅくちゅくと吸われた。
「ん、ぅ、……ん、んんッ……っはぁ、あ、ラディアス……さまぁ」
ふいに絡めていた舌が解かれ、唇が離れるのを感じ、目を開ける。眼前にある琥珀色の瞳と視線が絡み合い、胸が震えて声が甘くなった。くちづけで濡れた唇を拭うように親指で撫でられると、ラディアスが妖艶に微笑む。
「欲しいときは、ちゃんと言葉にしていい」
「……え?」
「自惚れたことを言うのなら、俺の唇が欲しいような顔をしてた」
「……」
「違う?」
蠱惑的な声と心に広がる甘い気持ちに導かれるまま、リーネは幸せだと伝えるように首を横に振って微笑んだ。
「いいえ」
欲しかった。
彼の唇に触れる自分の髪を羨ましいと思ったのは、初めてのことで、それを言葉にすることができないでいたが、彼は言ってもいいと言う。言葉にしてもいい、と。
何か許されたような、受け入れてもらえたような気持ちになったリーネは自然と唇を動かしていた。
「……ラディアスさまの唇が、……私の髪に触れ、て……、いいなって。それで」
「それで?」
先を促すような、甘い声に誘われるように、リーネは彼の琥珀色の瞳を見た。
「もっとって」
思いのほか甘くなった己の声に驚くよりも、ラディアスの表情に目が釘付けになる。彼がリーネの言葉を聞いてどう思うのか、その表情ひとつで嫌われないかを伺ってしまう。それが相手にも伝わったのだろうか。ラディアスはリーネの頬を手で覆い、微笑む。
言っていい。そう、言っているように見えた。
「……さっき、ラディアスさまは、ご自分だけが欲しいとおっしゃいましたが、それは違います。私だって、そう思いました。だから」
一度言葉を区切って心を決めると、リーネはラディアスを見下ろす。
「次は、私からラディアスさまを欲しがらせてくださいね」
にっこり微笑むリーネに、彼は虚を突かれたように、ほんの少し目を瞠った。何かおかしいことを言ったのだろうか。すると、ラディアスはリーネの頬から己の手を離し、視線を彷徨わせたあと、ため息をついてから視線を合わせる。
「……それは構わないんだが……。あのなリーネ、意味をわかって言っているのか?」
「ええ。何か問題でも?」
「問題も何も……、そんなことを言ったら、昨日みたいなことをされても知らないぞ?」
「そ、それは……、少し、恥ずかしいですが……、構いません。私、ラディアスさまでいっぱいにされると、とっても満たされた気持ちになって幸せになるんです」
この気持ちがなんなのか、リーネはまだわからない。
名前の付かない幸せな気持ちを胸に照れたように微笑むと、ラディアスが一瞬呆れたような表情を見せる。不思議に思うリーネの前で、彼は前髪をかきあげて天を仰いだ。
「…………はぁ、幸せな顔をしてそんなことを言ってくれるな」
「はい?」
「今の俺には逆効果だ」
言うなり、ラディアスの手がリーネの首の後ろに回り、再び引き寄せられる。
絡む視線、触れる唇。眼前にある彼の琥珀色の瞳が甘く揺らめいたかと思うと、彼の舌がぺろりとリーネのそれを舐める。まるで「開けろ」とでもいうような動きに、そっと口を開いた。よしよし。頭の後ろを褒めるように撫でたのと、彼の舌が咥内に入ってきたのとはほぼ同時だった。
「んんぅ……ッ」
触れ合う舌から広がる甘さが、リーネの肌をざわつかせる。
「ん、んふ、んぅ……ッ」
「もう俺のくちづけを覚えたのか」
ふ、と口の端を上げたラディアスの声が、くちづけの合間に褒めるように言う。それがリーネの心を甘く震わせた。嬉しい。褒められた。怒られることが多かったリーネにとって“褒められる”というのは、とても大切なことだ。それをいとも簡単にラディアスがするせいで、リーネは無意識に自分からラディアスの唇を求めはじめていた。
もっとくちづけられるよう、彼をまたぐように四つん這いになって、身体をぴったりとくっつけて、両頬を手のひらで挟むように覆って、溶け合うように唇を吸う。
「ん、んぅ、ん、ん……っはぁ、あ、あむ」
咥内で絡まる舌と口の中いっぱいに広がる甘い感覚に、思考が蕩けた。
くちづけの合間にはふはふと呼吸をし、時折琥珀色の瞳と視線を絡ませ、ちゅくちゅくと舌を吸った。それでも足りない。もっともっと。何かを求めるような感情がリーネの心を侵食していき、それが徐々に言葉になりそうだった。
どうしてこんなに彼を求めているのだろう。
わからない。いいや、わかる。この気持ちは、この感情は──。
「っはぁ、……はー……ラディアス、さま」
ちゅる、と最後に舌を吸って唇を放し、ベッドに手をついたリーネはラディアスを見下ろした。美しい彼の琥珀色の瞳を潤んだ目で覗き込み、再び唇に触れようとした。が、その直前に、彼の吐息が唇にかかる。
「──今度は、俺の番」
囁かれた低い声とともに、ラディアスが動く。
「ひゃッ!!」
くちゅり。四つん這いになったリーネの秘所に、彼の指先が触れる。ひく、と腰が震え、ナカからとろりとした何かが流れ出た。入り口を指先でくすぐられ、茂みの中からぷっくりと膨れた秘球を指の腹でころころと転がされる。
「ひゃ、あ、……あ、あ、……んッ」
甘い痺れがそこから生まれ、リーネの背中を反り返らせると胸がふるりと揺れて、ラディアスの眼前にさらされた。彼はそれを狙っていたのだろうか。身体を少しずらしてリーネの胸の先端に舌を絡めて、咥内へと誘い込む。
「ッあ、ぁああ……ッ」
甘い声があがり、先ほどまで絡めあっていた彼の舌が、リーネの乳首をねぶるようにしゃぶりついた。ちゅくちゅくと口の中でねぶられ、昨日教え込まれた快感が身体中を支配する。秘所を触れる彼の指先は、すっかりとろけた入り口からナカへ入ってきていた。「あ、あ、あぁッ! や、入っちゃ……ッ」
肉壁をいいこいいこと撫でるように入ってくる彼の指に、リーネは腰を震わせる。ぞくぞくとした何かが背中を這い上がり、リーネの乳首を硬くさせた。
「……俺のと、……リーネの蜜が混ざりあって、……どんどん溢れてくるな」
乳首を咥えながら言われると、その言葉どおり太ももを何かが伝い落ちていくのがわかった。昨日吐き出された彼の熱が、リーネの熱と蜜と混ざりあい、生暖かな感触が肌の上を伝っていく。恥ずかしい。胸の先端と、ナカに入れられた彼の指からもたらされる快感と羞恥に、リーネの瞳が徐々に潤んでいった。
「も、も、あ、……やぁ……ッ」
しかし、彼は動きを止めない。
ちゅるちゅるとおいしそうに乳首を吸い上げ、さらに舌先で転がす。
「っひゃぁ、ん、あぁッ」
かと思えば、いきなりリーネのナカをかき回すように、指を激しく動かすのだからたまったものではない。ぐちゅぐちゅとナカで溢れる蜜と残っていた彼の欲望が混ざりあい、落ちていく。甘い痺れがリーネを支配し、身体が支えきれなくなったところで、舌先で転がされていた乳首がようやく離された。
「……っはぁ、あ、……あ」
すっかり快楽に支配された思考で、何を考えることもなく、リーネは吐息を整える。自然と彼の琥珀色の瞳を探しそうとしたのだが、彼の手がリーネを誘ってくれた。
「いいよ、おいで」
耳元で優しく囁かれ、気づいたときには彼の指を咥えこんだまま腰を上げた状態で、しがみつくように肩口に顔を埋めていた。
「リーネ」
「ラディアス……さま」 -
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