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試し読み
「本当に……、お前といるとなぜこんな気持ちにさせられるのだろうな。出会った時からそうだ。場所がどこだろうが誰が見ていようが、抑えようという気が少しも湧いてこない。私はいくらでも恥知らずになれる気がする。これでお前がいつもそばにいるようになったら、どうなることか……」
「ん……っ」
「離れている間、私が頭の中をどれほどお前でいっぱいにしていたと思う? こうしてまたお前をこの腕のなかに捕まえたいと、そればかり考えていた。本気というのは、こんな気持ちを言うのだろう?」
髪を分けられ覗いたうなじに繰り返される、エイセルのキス。強引なくせに、私の言うことなんか聞いてくれないくせに……。キスは舞い落ちてくる花びらみたいに優しいなんて、やっぱりずるい。
「や……」
またこの胸を、彼の望むままに弄ばれるのだろうか。パルルモンの麓の宿で抱きしめられた時のように、エイセルは直に触れてくるかもしれない。お前が欲しいと告げてくれたあの日の彼の手の優しさを、唇の熱さを覚えているこの乳房に。
ああ、だけど──と、シェリーは目を閉じ、息をつめた。
シェリーは気づき始めていた。自分の心は、彼の愛撫を拒みたい気持ちだけで占められているわけではないのだと。どこかずっと深いところで、私も彼を求めている。
──!
シェリーは跳び上がるほど驚いた。胸に留まるはずだった愛撫の手が、思いもかけないところへと滑り落ちたからだった。エイセルがスカート越しにシェリーの腿を?んだのだ。
「やはり、どこも華奢だな。あの繊細な楽器がよく似合う」
「いや……、お願い……」
腿を撫でる手を思わず?んで止めようとしたシェリーを、「私を見放すのか」とエイセルが詰った。シェリーの指は震えて、ぎゅっと握りしめられた。
腿の内側の柔らかな部分へと、エイセルはもぐりこむ。
「お願い……、助けて」
「助けてほしいなら、じっとしていろ。そうすれば救われる」
──そんなの……!
「……ん……う」
シェリーの秘密を探り出そうと、エイセルの指が少しずつ、彼女がまだどんな男にも許したことのない領域を侵していく。
「あ──」
足を閉じようとどんなに力を入れても、無駄だった。わずかに開いた付け根の隙間を狙って、彼はするりと忍び込んでくる。
指は、まるでそれだけで意志を持った生き物だった。シェリーを宥める優しい動きで、シェリーの秘花を探り当てる。
「シェリー……」
「んん……」
頑なに閉じられているそれは、まだ半分蕾であった。エイセルの愛撫が、綻びを誘い促す。ゆっくりと繰り返し押されると、熱く甘ったるいものがじわりと広がり始める。下腹の奥の方が、うずうずしてくる。
「エイセルさ……ま」
少女がイヤイヤをするように、シェリーは幼い仕種で首を横に振った。指が花弁の上を短い線を引いて行き来し始めると、たとえ布越しであっても彼女は敏感に反応した。初めて味わうその甘く蕩けるような感覚は、どんどん鋭敏になっていく。
「やめて……やめてください……。私……恥ずかし……」
だって、気持ちが快いのだ。こんなふうに触れられて、じっとしていられないぐらい感じてしまっている。
「恥ずかしいのが快いんだ」
シェリーの変化にとっくに気づいているのだろう、エイセルの口調は満足そうだ。
エイセルはうなじだけでなく耳朶やこめかみとあちこちに口づけて、シェリーの心をさらにかき乱す。唇と指と、シェリーは二つの愛撫に翻弄され、次第に頭がぼうっとしてくる。
──また、涙が……。
エイセルと再会してから、何だかシェリーは泣いてばかりいる気がする。
「ここだろう?」
質問の意味などわからなかった。ただ、彼の指が何かを押し潰すように動くと、秘花の奥がズキズキと疼きはじめた。シェリーを羞恥の鎖に繋ぎながらも捉えて離さない快感が、にわかに大きくふくらんだ。まるでそこに小さな心臓が生まれたみたいに、エイセルの動きに合わせて脈打っている。
半身を押しつけるようにして扉に取り縋ったシェリーの耳に、廊下を歩いてくる足音が聞こえた。
──お母様!
シェリーは零れかけた吐息を、懸命に唇を結んで閉じ込めた。
再び扉を叩く音。母親が新しいお茶の支度をして、運んできたのだ。もちろん、開けられるはずもなく……。
「どうした、シェリー?」
意地悪な人が耳元で、返事をしろと悪魔の命令をする。
「黙っていると私たちが何をしているのか知られてしまうぞ。いいのか?」
お前を前にすると、いつでもどこでも欲望を抑えようという気がまるで起こらない。いくらでも恥知らずになれると言い切った王子の、まさに恥知らずな指は、こんな時もシェリーの花を散らすことをやめない。いや、むしろさっきよりも露骨な動きでその場所を愛している。
捩れた花の合わせ目が開かれ、埋もれた雌しべをつつかれると、シェリーの脇腹を何とも言えない震えが駆け抜けた。シェリーは今度こそずるずると、その場に崩折れてしまいそうになった。
「シェリー?」
母が遠慮がちに娘を呼んだ。
「お母様……」
「お茶よ」
「待ってください。もう少し後で……」
「エイセル様は?」
「今は……、あちらで新しい譜面を読んでいらっしゃいます」
うっかりすると、おかしな声をあげてしまいそうだった。母には見えていなくても、いや、見えていないからこそ、とても淫らなことをしているという罪の意識がさらに大きく膨らんで、シェリーを羞恥のかたまりにする。だが、シェリーはエイセルの手をどうしても振りほどけない。彼を拒めないのだ。
「何か失礼でもあったの? ずいぶん静かだけれど」
母が急に声を低くする。肝心のマルリカの音色が少しも聞こえてこないので心配になり、お茶を理由にもう一度様子を見にきたようだった。
「何も……、何もないから……」
「楽しんでいただいているのなら、いいのだけれど」
十分楽しんでいるぞと、シェリーにだけ聞こえる声が囁く。彼の息が、今や熱を帯び燃えるようなシェリーのうなじをくすぐった。
母親が行ってしまい安堵したのも束の間、エイセルがスカートをたくしあげる気配に、シェリーの心臓はまたも跳ね上がらなければならなかった。
「シェリー」
もう放してとシェリーが許しを乞う前に、あやす優しさで名前を呼ばれた。
「昔もお前にこんなふうに触れたことがあった気がする」
「や……、あ、エイセル様……」
あらわになったシェリーの足は積もったばかりの雪のごとく白く、戦きに震えていた。
肌の上を滑っていくエイセルの手は、少し冷たかった。初めて口づけられた時の唇を、シェリーに切なく思い出させる。
「もう時間がない」
絶え間ないキスでシェリーの意識を遠くへ誘って、指はあっという間に目的の場所に辿り着いた。ドレスよりもずっと薄い、清潔な布の上から、すでにもう散々苛められたそこを擦られた時、シェリーは大きく喘いで身を捩った。奥の方から熱いものが溢れてくるのがわかる。
「あ、ああ」
「可愛い声だな」
その声までもすべて奪い取ってやろうと、エイセルはシェリーに覆い被さるようにして唇を塞いだ。
「……んっ」
秘花を弄る指は止まらない。エイセルは潤みの中にうずくまる、ふっくらとした幼い芽を探り当てると、くすぐる柔らかさで撫でたり転がしたりし始めた。その場所がどれほど感じやすく、そこから生まれる悦びがどれほど深いものかをシェリーに教える。
──苦しい。
苦しいとしか言いようのない感覚に、シェリーは呑み込まれていた。
快感が大きな波となって押し寄せてくる。
頭のなかまでふわふわと雲を踏んだように軽くなり、どこかとても高いところにさらわれてしまいそうだった。
「エイセルさ……ま……。助けて」 -
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